ホームシックはなおってきたみたいです。
処方箋は、新しいプロジェクト、スカイプ、フォートナム&メイソンの計り売りのアッサム。
最後のはaiちゃん情報です。いい匂い。
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建築家の故・黒川紀章が若尾文子にプロポーズで
「君はバロックのような女性だ」
と言ったのは有名な話。

若尾さんの華やかさを表したんでしょうが、
この話には、バロックは「歪んだ真珠」という意味のポルトガル語に由来し、
「風変わり」「できそこない」の意味で使う言葉だった、
というオチがつくのが定型のようになっています。

(ただし、古典建築の正当性が強いヨーロッパでは、ゴシックにしろバロックにしろ、古典建築からはずれた様式はだいたい侮蔑的な意味から始まったネーミングらしいので、しょうがないところもあります。)
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でも、確かにそうなのですが、建築っぽい言葉で女性を口説こうとするならば、
これはギリギリ「あり」に入る唯一の言葉なんじゃないかという気がします。
「ゴシック」も「マニエリスム」も、全然、かわいげを感じない。
「アールヌーボー」は女っぽいイメージがあるけれど、なんとなくキマらない。
「擬洋風」とか「寝殿造」とかは普通の女性には論外。
もしかしたら、建築辞典を一晩中読んで探したのかなあ、なんて思ってしまいます。
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前にも書いたのですが、事務所で大きなコンペが終わってしまったので、
のんびりムードがただよっていた先週の月曜日。
「人もいないし、ユー、帰っちゃいなよ、天気もいいしさ。」
というようなことを言われたので、ヴィクトリア&アルバート博物館の
「バロック展」を見に行ってきました。
Baroque 1620-1800: Style in the Age of Magnificence

本当にいいお天気でした。

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建築だけではなくすべての分野の様々なものがひしめく
ある意味「ごった煮」のような展覧会でした。
それらを一つにまとめる「バロック」とはなんぞや??という話ですが。
展覧会の前書き(拙訳)はこんなでした。
バロックは17世紀中頃から1世紀(100年)にわたるヨーロッパの主流の様式であり、この期間は、(中世の地方分権から中央集権化が進んで)多くの国で絶対的な独裁政権が確立されたのみならず、ローマカトリック教会もその権力を強固にしていった時代であった。バロックはこれら強大な独裁権力に支持された様式である。
豪華、印象的、劇的、情緒的、などと評されるが、同時にその目的は実に現実的(「政治的」に近いのかも?)なものであった。バロックの芸術家は絵画、彫刻、建築、内装、庭園、そして劇や公的儀式のような仮設的なものまで、多岐にわたって活動した。人の五感すべてに訴える『総合芸術作品(total works of art)』をめざして数種の表現を同時に使用することも多かった。
また、バロックは世界中に影響を与えた最初の様式でもある。イタリアとフランスを起源としながら、ヨーロッパ全土、そしてさらに拡大するヨーロッパ勢力により世界各地に広まったのである。
と、易しい言葉で言ってくれてますが。
一言でいうと、「ドラマチック(劇的)」ということかと。
文字通り、劇のように、時にすべての芸術を総動員して感覚に訴え、(無理やり)感情の高まりを換気しようとするもの。
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でも、そんなこと言ったら、いろんなものが全部バロックだよ、と思うわけです。
手元の『ヨーロッパ建築史』によれば、美術史家のハインリヒ・ヴェルフリン(1864-1945)さんは
「バロックという言葉を『様式概念』『時代概念』『反古典主義的といえるすべての傾向』という3つのレベルでとらえていた」
とあります。(この教科書の中ではもちろん『様式概念』を第一義にしていますが。)
3つ目がおもしろいです。
『反古典主義的といえるすべての傾向』って。
どんだけ広いんだという話です。
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展覧会を見終わってから、そこで売っていたこの本を買ったのですが、
Baroque & Rococo
Germain Bazin(フランスの美術史家)
(1964 in UK)

この作者も、ヴェルフリンさんを踏襲しているようです。
The word 'rococo' has remained attached to eighteenth-century art, but 'baroque' has acquired a much wider acceptance. Modern theories of art have been inclined to discern in Baroque art a formal value resulting from a vital attitude, whose character is to some extent complementary to the Classical, so that the whole history of forms might be summed up as an alternation of Baroque and Classical.
先の3つ目の「バロック」です。
The German theorist Wölfflin has described the formal characteristics of each of these two tendencies.
Classical art does not turn its back on nature - it is an art of observation, but its aim is to go beyond the disorder of appearances and to seek that deeper truth which is the underlying order of the world. Classical compositions are simple and clear, each constituent part retaining its independence; they have a static quality and are enclosed within boundaries.
The Baroque artist, in contrast, longs to enter into the multiplicity of phenomena, into the flux of things in their perpetual becoming - his compositions are dynamic and open and tend to expand outside their boundaries; the forms that go to make them are associated in a single organic action and cannot be isolated from each other. The Baroque artist's instinct for escape drives him to prefer 'forms that take flight' to those that are static and dense; his liking for pathos(情念、ペーソス) leads him to depict sufferings and feelings, life and death at their extremes of violence, while Classical artist aspires to show the human figure in the full possession of its powers.
この「バロック」は、まるで「古典主義」という厳格な両親のもとで育てられた非行少年のような言われ方です。
自然のなかに見いだした静的な秩序を理想とする古典主義。
それでは息がつまると、エスケープして、テイク・フライトした形態を持つ「バロック」。
感情的になり、動的になり、死や苦や暴力といったテーマを好むようになってしまった「バロック」。

なかなか、ずいぶんなまとめられ方です。
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上の捉え方は一方の極なんでしょうが、
少なくとも、この展覧会は「バロック」の範囲を広げて、感覚的に受容しようというのがテーマのようでした。
建築のバロックのシンボルの1つであるねじれた柱のスケッチと、

あまりかっこよくないチャールズ2世のねじれた胸像が一緒に見られるのは、

なんというか、若干コミカルです。
(※でも、このチャールズ2世像も、ベルニーニ作のルイ14世の胸像がもとになっているので、ベルニーニの影響が大きすぎたということかもしれないのですが。)
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感情移入というものが有史このかた、どれくらい存続しているか、知る由もありませんが、
今のような感情移入の形態はこの時代に負うところもかなり大きいのかもしれないと思ってしまう。
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結局、深く考えずに、ただ楽しんでかえってきたのですが
ここでこういう展覧会をやるということは、
イギリスからは「バロック」は近くて遠い外国である、という思いがある気がします。
確かに他の国のほど激しいバロックの流行は見られない国なのですが
(たいてい理由は議会政治とピューリタン革命に帰されている気がしますが)
範囲を広げると、彼らの言うところの「バロック」的なるものは、
イギリスにも見いだすことができるかもしれない。
そこから、バロックを理解する糸口が見つかるかもしれない。
だからこそ、こういう「なんでもバロック」という展覧会が開かれたのかな、と思います。
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